「それじゃあ、お薬出しておきますね」
「はい」
女医さんが診断書を書く姿を横から眺めながら、わたしは次の言葉を待った。
「ビタミン剤ですから、副作用はありません。一応、気分をリラックスさせるお薬も出しておきますね。心が落ち着かないときとか、寝付きが悪いときに飲んでください」
「はい」
ただ頷いた。
女医さんが顔を上げ、こちらに体を向けた。
「あんまり頑張りすぎないで。ゆっくり休みましょう」
「はい」
優しい言葉が、とても心に響いた。
わたしは立ち上がり、先生にお礼を言って診療室を出た。この病院に来てよかったと思えた。
体が怠い。どうしようもなくつらい。内科の検査では異常がなかった。だからここに来た。
心療内科に。
「お大事に」
処方箋を受け取り、家へまっすぐ帰る。とにかく今は、薬を飲んで休みたかった。
「それじゃ、今日も同じお薬を出しておきますね」
「はい」
いつものように、わたしは頷いた。
ここに通うようになってから1年が経つ。症状は少し治まった気がするが、仕事は続けていられなかった。今はただ、のんびりと毎日を過ごしている。親元にいるのが、救いだった。この病院にずっと通えるから。
「お大事に」
処方箋を受け取り、帰路につく。今日の晩ご飯は何かな。帰ったらゲームをしよう。
「それじゃ、今日も同じお薬を出しておきますね」
「はい」
先生の笑顔はいつも通り。わたしが頷くのもいつも通り。
この病院と先生と薬のおかげで、本当に助かっている。まだ毎日つらいけど、先生がいなければ、薬がなければ、わたしはもっと悪くなってただろう。
そう、早いものでもう10年。
薬がなくなると、どうしようもなく不安になる。夜、絶対に眠れない。薬がないと……。
「お大事に」
処方箋を受け取り、わたしは頭を下げた。
これでまた、当分は安心だ。